『飯豊山/慈恩(二)』からの続きです。
明けて、13日。よく、眠れました。
予報に反して？ご来光？あわよくばモルゲンロート？
と期待ばかりがふくらみましたが、…
陽精の渾身のショータイムはここまで。
さて、雨になるのは必至。
朝餉を早め、可及的速やかに？小屋を発つことに。
昨夜の酒席のやり取りは、お山の耳にどう届いただろう。
"子曰わく、参よ、吾が道は一以って之れを貫く。曽子曰わく、唯。子出づ。
門人問うて曰わく、何んの謂いぞや。曽子曰わく、夫子の道は、忠恕のみ"、
とは、『論語』の一節。
大意を酌めば、
"「参よ、私の方法は、ただ一つのことで、つらぬかれている」。
それに対して曽子(参)は、「はい」とのみこたえた。
孔子がその場を去ると、他の弟子がたずねた、
「さっきの対話は、どういう意味ですか」。
すると曽子は説明して言った、
「うちの先生の方法は、忠と恕、忠とは、自己の良心に忠実であること、
恕とは他人の身の上をあだかも自己の身の上のことのように親身になって
思いやること、ただこの二つだけである」と。"
山にあこがれ、山を愛し、山を崇める時でも、いや、その時ですらも、
人は山の賜物を享楽し、山を利用する、利用しようとする、
その性向から逃れられない。
ビジネスの論理の中に、山の倫理を射し込む者は、
同時に、山の倫理の中にビジネスの論理を持ち込むことはできない。
山の倫理の中にビジネスの論理を持ち込んだ者が、
ビジネスの論理の中に山の倫理を受肉させることができないのと同じである。
このずれ、この重大さ、…
飯豊の保全は、この知覚を大切にする運動であって欲しいと、
願わずにはおれない。
山での振る舞いはすべて、山に嘉せられてはじめて、意味を有つ。
その振る舞いに愛があるのか、ないのか、それがすべて。
「裁いてはならない」。
"然うだ"と、お山の響。
朝餉を了え、素早くパッキング？
一宿の恩義、本山小屋に礼し、いとまを告げます。
出発。
御前坂から、草履塚。
磐梯山のエ～ルに応えます。
カフェ御前坂。
名残を惜しみつつ、すたこら？
お山の鄭重なる目送にあずかりました。
御秘所へ。
うれしい陽精のエ～ル。
お山の祈りは、"Grace be with you".
草履塚で、ひと息。
靴を滑らせ、ス～イスイ？
"See you, later",
お山に礼し、いとまを告げれば…
"Grace be with you, my friend".
お山の祈りが沁みてきます、ありがとう。
切合小屋で、リョウくんはデポ品の回収。
了えて、いざ、切合尾根へ。
本山がやさしく見守ります。
御沢の沢床に降り起ち、見上げます。
あとは…
お山と語らいながら。
地蔵岳は、まだまだ。
カタクリの溌剌が、私の足を鼓舞します。
背中を押してくれる、本山。
地蔵岳が、迫ります。
えっちらおっちら、足を叱咤し…
地蔵岳を頂けば、笑い声？
何と、先着のリョウくんが西川山岳会の柴田さんたちと和やかに歓談。
お久しぶりです。
柴田さんのザックにはスキー、御秘所沢を滑りたかったそうな。
生憎、もう直ぐ雨。本日は、此処を山頂にされる由。
先発の彼らを見送り、一休み。
遅れて、重い腰を上げると、待望の？雨。
小雨です、濡れて参ろう。
小雨とはいえ、足を急かします。
"See you, later"、ここで本山とはお別れ。
"Grace be with you".
新緑の律動に、足取りは軽く。
イワウチワのねぎらいエ～ルに、ほっこり。
ブナと言葉を交わしながら、すたこら。
ザンゲ坂は、慎重に。
大日杉小屋の前にポンと出れば、
山路の了わりです。
無事の下山、
慈恩の山路に
感謝、感謝、感謝。
Ｆｉｎ
