あるく

~山の恵みの備忘録~

言葉の糧~八木重吉

八木重吉の詩に、いつごろから親しむようになったのか。

いつのまにか、彼の詩集は机上に恭坐しておりました。

この頃、胸にしみいる詩篇を、いくつか・・・

 

*以下、『定本 八木重吉詩集』(彌生書房刊)から。

 

 

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ふるさとの 山

 

ふるさとの山のなかに うずくまったとき

さやかにも 私の悔いは もえました

あまりにうつくしい それの ほのおに

しばし わたしは 

こしかたの あやまちを 讃むるようなきもちになった

 

 

 

 

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天〈天というもの〉

 

天というのは

あたまのうえの

みえる あれだ

神さまが

おいでなさるなら(ば) あすこだ

ほかにはいない

 

 

 

 

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私よりも偉い人 ―それは

「本当に

自らを捨てる人」だけだ

 

 

 

 

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「幸福」を失うたひとは

うつむいて 考えるがよい

どこか まちがっているかもしれない

「幸福」を押しやっといて

「幸福」を探すなら― そりゃあ 無理だ

だが―「幸福」って あるもんだろうか?

 

 

 

 

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一歩踏みいだすのさえ

容易なわざではない

ちがった一言を言うのさえ

此の社会ではむずかしいのだ

 

でも 私はゆこう

 

 

 

 

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みずが

ひとつのみちをみいでて

河となってながれてゆくように

わたしの このこころも 

じざいなるみちをみいでて

うつくしくながれてゆきたい

 

 

 

 

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このよに

てんごくのきたる

その日までわがかなしみのうたはきえず

てんごくのまぼろしをかんずる

その日あるかぎり

わがよろこびの頌歌はきえず

 

 

 

 

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かげのごとくにすぎてゆく

わがせいかつなり

されど おもえば

かげのごときはかなしむねうちあらず

このささやかなるいのちのかげに

いざつつましくわれをもやしてゆこう

 

 

 

 

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もったいなし

おんちちうえ ととのうるばかりに

ちからなく わざなきもの

たんたんとして いちじょうのみちをみる

 

 

 

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よぶがゆえに

みえきたるものあり

よぶことなければきえゆくものあり

 

 

 

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われよべば

みえきたるなり

わがよぶは

みえきたるもののこころのうごきのゆえならん

もったいなしととなえんか

 

 

 

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みえきたらんとするもの

よぶがゆえにわれもよぶ

そのものわれによぶこころをうごかすごとし

 

 

 

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きりすと

われによみがえれば

よみがえりにあたいするもの

すべていのちをふきかえしゆくなり

うらぶれはてしわれなりしかど

あたいなき

すぎこしかたにはあらじとおもう

 

 

 

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できるだけ ものを持たないで

こだわりなく 心をはたらかせたい

 

 

 

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天に

神さまがおいでなさるとかんがえた

むかしのひとはえらい

 

 

 

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十字架は悔いへのくさびである

罪ふかくして悔いを完うし得ぬ者へのめぐみである

何人でも仰ぎさえすれば救わるるという約束である

基督を見し者が信じたる福音である

 

 

 

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私みずからであること

それのみ絶対である

私みずからより大きい必要もない

私みずからである時のみ神をかんずる

 

 

 

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万葉の調律も必要でない

芭蕉の調律も必要でない

私自らに必然なものだけが尊い

私はどんな風にうたってもかまわない

ただ私の道は一つの外に無い

 

 

 

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ふしぎなのは魂である

完いたましいは腐れている

砕けているときのみ魂は完全であ

 

 

 

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忍びてゆけ

突破しながらゆけ

頭をひくくたれひくくたれ

死ぬことができぬほどしつこくゆけ

 

 

 

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ゆきなれた路の

なつかしくて耐えられぬように

わたしの祈りのみちをつくりたい

 

 

 

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人は人であり

草は草であり

松は松であり

椎は椎であり

おのおの栄えあるすがたをみせる

進歩というような言葉にだまされない

懸命に 無意識になるほど懸命に

各各自らを生きている

木と草と人と栄えを異にする

木と草はうごかず 人間はうごく

しかし うごかぬところへ行くためにうごくのだ

木と草には天国のおもかげがある

もううごかなくてもいいという

その事だけでも天国のおもかげをあらわしているといえる

 

 

 

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ゆるされ難い私がゆるされている

私はたれをも無条件でゆるさねばならぬ

 

 

 

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人生はいつたのしいか

気持がひとつになり切った時だ

 

 

 

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深い人生よりもっといい人生

それは個に徹した人生だ

浅くもなく深くもなく

浅ければ浅いままに

深ければ深いままに

力をつくして残無い人生だ

 

 

 

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やさしさ

謙遜な心

すなおな信仰

それは浅くても尊い

 

 

 

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虹を見るように

神を畏れる人は尊い

 

 

 

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長い命でないとおもえば

これから一生懸命

力をつくして

神様を信じ

人を愛してゆこう