『飯豊周行(二)』からの続きです。
明けて、10月9日。未明。
空には月天子。
足が回復したので、大日岳の頂を目指すことに。
朝食をしっかりとってから発とうと思っていたのですが、
4時にもまだならぬうちから、一人、また一人と、
ヘッデンを頼りに闇の中へと続きます。
負けられないなぁと?私も、つられて、
いざ、大日岳へ。
ヘッデンの電池残量が少なくなったのか、
光量が弱く、足もとがやや不如意。
(ちゃんと予備は持っていますよ)
ゆっくり行きましょう。
東方の空が明るみ始めると、雲がどしどし生まれてきます。
時折の雲の切れ間に、朝のドラマ。
陽精のエ~ルに応えます。
雲気、雲興、雲裏、――黙々の運歩の末に、
大日岳を頂きました。
感謝、感謝、感謝。
すべてのことに、感恩が溢れます。
しばらくたたずんでいると、陽精が雲を薄くして、祝福。
"Grace be with you".
何も見えずとも、此処に起つだけで、
見えないなにかがわたしのこころをみたしてくれます。
歩くこと、歩きつづけること、それがすべて。
山頂に居合わせた方にも入っていただき、記念写真。
にぎやかにしてくださいました。
"われよべば
みえきたるものあり
わがよぶは
みえきたるもののこころのうごきゆえならん
もったいなしととなえんか"
(八木重吉)
あまりゆっくりはしていられません。
朝餉はまだだし、ダイグラ尾根が待っているのですから。
さあ、御西へ、戻りましょう。
陽精と、間々、語らいながら。
御西小屋に戻りました。
急いで、朝ごはん。
そそくさと朝餉を済ませ、苦手なパッキング。
了えて、管理人の羽田さんに入って頂き、記念に、パチリ。
ほんとに、お世話になりました。
どうぞ、お元気で。
御西小屋にいとまを告げます。
ガスの中、出発。
わたしのハイロマンス、草月平を…
のたりのたり。
こころがきれいになって、愉しい imagine。
白鯨は、小さくなって、再生への意思をもやします。
"みえきたらんとするもの
よぶがゆえにわれもよぶ
そのものわれによぶこころをうごかすごとし"
(八木重吉)
御鏡ノ雪よ、飯豊の衷誠よ。
陽精の祝福に与かって…
飯豊山頂に起ちました。風が私を追い立るので…
すぐさま、ダイグラ尾根へ。
雲を抜けると、祝祭の山肌。
宝珠山もすっかり綺羅を飾っています。
ん~、絶景。
「どうだい、この晴れ着、似合ってるかい?」と、
誇らしげに宝珠山。
大岩沢も、大丸森山も、秋を渾身で讃いあげます。
さて、ダイグラ尾根。
しばらく道刈りが施されていないため、草茫々で、足元不如意。
特に、へつる処など、転落せぬよう注意が喚起されています。
やはりというか、道が判然とせず、ヒヤリの連続。
覚悟を決めて、ド緊張?
休場ノ峰まで、
上っているのか下っているのかわからないミステリーゾーンへ?
突入です。
立ちどまっては、秋色に身を浸します。
あの岩峰が、いつもの息み場処。
吸いこまれそうな、絢爛。アブナイ、あぶない。
この手前、何でもない所で、つまずき、転倒。
とっさに受け身で、ザックがクッションになり大事に至らず。
でも、転倒、この尾根では初めてかな?
気が緩んだのか、疲れなのか、足が思うほど上がりませんでした。
要は、この尾根では、緊張よ常に、ということ。
だらだら歩きは、通用しません。
でも、こんな景色の中を、とろけず、たるまず降るのは、
至難の業です。
宝珠山の肩へと降り起って、振り返ります。
まだまだ続く、切歯の尾根。
おもしろいオブジェ。訴求力がありますね。
1499M峰、巻くことになります。
千本峰。
斜面がいい色合い。
こんな中、緊張しながら歩けと言ったって…。
さて、手荒い扱いが待ち受けています。
息を切らせば、宝珠山のねぎらい、エ~ル。
岩場に上がれば、直ぐ先に休場ノ峰。
宝珠山が遠ざかります。
稜線は雲の中。
クサイグラ尾根を落とす烏帽子岳。威勢がいいなぁ。
休場ノ峰に起って、宝珠山にいとま。
後は紅葉黄葉を体に映し、転がるように…
ハァ~、困憊のため息とともに、桧山沢。
吊橋が備わってよかった、よかった。有り難い。
桧山沢の懇ろなねぎらいに与り、途中の緊張は、
溶けてしまいました。
"お疲れ様!"と、ダイモンジソウ。
ほっこり。
後は天狗平まで4km、よたよたと?歩きます。
無事の下山、
慈護の山路に、
感謝、感謝、感謝。
Fin