『石転び沢/龍翔(一)』からの続きです。
おにぎりを食べてゆっくり息みました。
大半の方は此処でアイゼン装着、ですが、
ここから梅花皮小屋まで距離にして優に3km以上、
軟弱者の私としては出来るだけ足の負担を軽くしたいので、
勾配が弥増す「ほん石転び沢」の出合からにしています。
其処までは、
スプーンカットに足を合せ、ストックでバランスをとりながら…。
北股岳が招きます。
白龍よ、どうぞ、いっとき、あなたの背に遊ばせたまえ。
いざ。
振り返れば、後続の方たちがチラリホラリ。蟻の様です?
ん~、THE 雪渓。石転びはこうでなくっちゃ。
速く歩くなんて…
もったいない。
白龍の背にのり、高みへと、一歩、一歩。
北股を仰げば、月天子。
このたどたどとした形影を見守ります。
歩を運ぶ、しあわせ…
心を込めて…
そして、思いを込めて…
梅花皮岳を背に、ほん石転び沢が見えて来ました。
出合です。
雪渓の登高は単調で、時間と距離の感覚が狂い、
休憩が疎かになりがちです。
ゆっくり息んで、アイゼン装着。
ここを上って梅花皮岳へと突き上げる方もいる様ですが…
さて、足元は確り、前進です。
岩稜からのエ~ルがうれしい。
振り返って、ひと息。
後続との距離が縮まって来ました。
白龍のはく息は、白い雲…
ペ~スが落ちた?私を、「ご老人」が追い越して行きます。
迫る、大円形劇場。
一息ついては、振り返ります。
稜線が圧しかかると、そこは北股沢出合。
いよいよ核心部です。
白龍の息にけむる北股沢。
後続の方が迫ります。
おおぞらへと、かけりゆくこころ。
クライマックスに、胸が高鳴ります。
どうぞ、石を転がさないで。
足は重く苦しい、
けれど、この愉悦は、どうしたことでしょう。
この息を吐く白龍もまた、愉しいにちがいありません。
この雪の塊は、人の、上るという愛によって、
物であることを止め、応答として、自己を啓示する、
閉じ込められた存在から、白龍として、救済される…
空へとかけりゆくのです。
だから、imagine your own dragon.
喘ぎ、あえいで中ノ島。
北股のエ~ルに応えます。
土の魅力に負け?中ノ島に上陸。
上る者を歓呼して迎える、雪の渓。
どんどん抜かれてしまいそうです。
白龍の呼ばわる響に鼓舞され、上へ、上へ。
北股が、がんばれ、頑張れ~。
ガスの中、先行のステップに歩を合わせ、
えっちらおっちら。
若い衆に譲って…
のそのそ歩を運べば、梅花皮小屋。
愉しき imagine の、結びです。
『石転び沢/龍翔(三)』に続きます。