あるく

~山の恵みの備忘録~

休場ノ峰を以て本日の山頂とす。2010年7月17日

会心の山行は光り輝き、自らの山歴に燦々としています。
しかし、「失敗」の山行もまた、こうして無事に乗り越えてみれば、
限りなくいとおしいものです。
「失敗」の山行こそよく味わうべし、味わい尽くすべしと、
この、登る者を仔細に試して止まない尾根、ダイグラは諭します。

今日(7/17)は、泊りでダイグラ尾根~梶川尾根の周回を予定し、
小国へと勇みました。
早朝、コンビニで、HP『飯豊朝日連峰の登山者情報』の主筆にして山岳救助の重鎮、
井上邦彦(HZU)氏とバッタリ。
当方、何に不安があったのか、別れ際に一言、
「井上さんにご迷惑かけないようにしますね」。
  
天狗平に到着すると、机・椅子が登山届出所の前に出され、
小国山岳会、高橋会長が登山者指導を始めておられた。――
曰く、「昨日はY放送の人がダイグラでバテてしまい下ろすのが大変だった」。

準備は万端、さぁ出発です。       



小国山岳会会長高橋さん。ご苦労様です。

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ちょっと長い林道歩きを経、この桧山沢に架かる吊橋を渡れば、ダイグラ尾根の取り付きです。

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烏帽子岳へと導くクサイグラ尾根。ならのき峰が勇ましい。初っ端からかなりの汗が。

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御西~天狗の稜線に心が弾みます。

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主稜線が見渡せるようになって来ました。高温多湿、加えて全くの無風。木々の葉も微動だにしません。
汗が大量に、異常なまでに吹き出ます。帽子のつばからもポタリポタリと滴って。

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汗、汗の中、花に慰められて。

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種蒔の池通過。汗、どうしてこれ程の汗が・・・。

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まだまだです。

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あいの峰~鍋倉山のライン。汗がだらだらと・・・。

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梅花皮岳、北股岳が見えて来ました。

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長坂清水。水はたっぷり(3リットル)所持。寄らずに行きます。

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清水を越えた辺りから少しふらふらし出し、休場ノ峰手前の急坂ではもう容易に足が揚がりません。「出血多量」ならぬ「出汗多量」のせいでしょうか。一歩に5~6呼吸要する始末。熱中症??? 手足の指が攣って硬直したりと不安が過ぎります。

小さな花の前に佇み、あがった息を静めます。

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休場ノ峰到着。息が極度に荒く、フラフラの状態。手足の指が攣って硬直、加えて足腰や腹胸部の違和。体内からの塩分の急激な減少・不足によるのでしょう。脱力、減退・・・やや朦朧として意識に障害。こんな登山者を許すほどダイグラは甘くありません。此処までで既に4時間以上を要しています。全体はこの3倍が相場。川入、大日杉からはいざ知らず、このダイグラでだましだましは通用しません。たとえしたとしても、この状態、このペースでは12時間じゃ済みそうもありません。予報から言っても途中で雷雨に捕まるのは必定。疲弊しきった身体にドシャ降り、・・・避けなければ。安易なビバークも。

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峰々からは優しい視線が。でも登高意欲が全く湧きません。その姿も虚ろ。今までなら、「さぁて、お次は宝珠山だ!待ってろよ!」なのですが。

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梅花皮岳、北股岳が鮮やか。ああ、空がきれい。

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梶川尾根が、「落ち着いて考えろ」と。

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エブリ差も、「無理はするな」と。

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峰々の視線のやさしさ。

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あの稜線に遊びたかったなぁ。

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my ザックと相談です。
この先へ突っ込む→不測(でもないか)の事態→井上氏への「ご迷惑かけないようにしますね」が反故に。遭難が現実のものになってしまうではないか!? 
決断しなければ。逡巡は許されない。
遭難。それは何も身体に重篤な障害を負うことを云うのではない。自力で、他人の助けなしには自らの登山を完遂することが出来ない状況をいうのだ。今の段階でこれでは、飯豊山頂はおろか宝珠山の肩に行き着くまでに行動不能に陥る可能性がある、充分に。
イヤだ!遭難はしたくない、絶対に!
自力下山。ツラくとも、這いつくばってでも、自分の力で下山すること。
今なら、これぐらいなら、何とか下山のギリギリの体力はあるはず。決断しなければ。

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もう上に行かなくても飯豊の峰々に会えたじゃないか。

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無理に行っても雲に叱られそうです。

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此処が本日の山頂。 峰々に・・・

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挨拶をして。

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また来るね。

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鋸(のこぎり)の切歯。此処からがダイグラの真骨頂。今日は玄関先で失礼しよう。

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やや朦朧とした頭と自由のあまり利かない足を労わりながら、下山の路を辿ります。慎重に慎重に時間をかけてゆっくりゆっくりの繰り返し。飯豊山荘、遙か彼方。なんて遠いのか。

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途中、長坂清水にやっとの思いで天来の冷水を得、シートを敷き、タオルを湿らせて額に載せ、しばらく横になって大休止。癒されました。

花はどこまでもやさしく。

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種蒔の池通過。余裕の行程のようですが(笑)、余裕のある時だけカメラに手が回るのです。ダイグラ尾根の悪場の数々、とてもカメラには手が回りません。

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ゆっくりゆっくりですが、だいぶ降りてきました。緊張の続く下降、息も荒く、汗が滴ります。

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雷鳴が賑やかになり始めました。主稜線はもうガスの中です。

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長いながい下山の闘いの末に、やっと吊橋に辿り着きました。

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緊張が走る吊橋の揺れ。

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この平地、この時期にしてこの残雪!

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桧山沢の清流にしばし疲れを忘れます。

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正面からの大又沢と右からの桧山沢。この二つが此処で合わさって・・・

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玉川の誕生です。

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ドボンといきたいですが、ふらふらです。足元も覚束ません。

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花に労いの言葉を享けて。(ヤマジノホトトギス

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林道への径を辿ります。雷鳴かまびすしく、この辺にも上からのもらい雨が。カメラはザックの中に。

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  暑さに弱い私。体調に不安は、・・・
  なかったと言えば嘘になります。      
  高温多湿に無風。午前零時に発って天狗平まで車で4時間。
  睡眠をほとんどとっていませんでしたし、
  知人に奨められたあの「脂肪を燃やす」VAAMゼリーを
  山行前に摂取したのに加えて行動中は流行のアミノバイタルと、
  ぽんこつ軽自動車にジェット燃料でオーバーヒート? 
  さらに、夏なのに気が緩んだのか荷の軽量化を怠り、
  歩荷力もないのにいろいろ詰めて・・・、等々。
  様々な遠因が複合したのでしょう。
  林道に出てからもストックに身体を預けながら何度も休み休みで
  駐車場に到着。

  ザックを投げ出し、動作を一つずつ、息を整えながら・・・。



  無事下りてこれたこと、ただただ感謝です。



  お わ り