『大日岳/嘉恵(二)』からの続きです。
雲がはらわれ、大日岳、見参。
遅蒔きながら、
"Welcome home, my friend".
"ありがとう"。
この山の、信実、そして謙遜が、身に沁みて来ます。
この光、この風、この生命、
いい景色をたくさんすって、こころはいきいき。
さて、小屋に戻りました。
これから大日岳へ行かれる下越の田中さんとご友人をショット。
田中さんの手で、不具合のあった御西小屋のトイレのドアが、
修理・交換されました。ご苦労様でした。
また、飯豊でお会いしましょう。
バタバタと苦手なパッキングを了え、御西小屋にいとま。
"See you, later",また来ますね。
一面の草紅葉、雲遊ぶ草月平を遊歩。
愉悦の、ひと時。
陽精の頌に、耳澄ませながら。
雲さんがはしゃぐ中を、…
てくてく、てくてく。
雲も、歩くように、ゆっくり。
白鯨の痕跡…
草月平には、
おだやかな秋の旋律。
天空に翔び、新たなるかたち、新生を待つ白鯨。
陽精の頌歌に、無邪気に舞う雲。
私の心も舞い上がります。
コーナーを曲れば、駒形山、そして飯豊山。
雪の一徹、…
紅葉とコラボ。
弘法清水で水筒を満たし、ダイグラ尾根に備えます。
感謝。
惜しみ、おしみながら、歩を運びましたが、
いつのまにか駒形山。
飯豊の山頂まで、あとわずか。
周観、飯豊の暢達に浸ります。
"ここに 三昧のせかいがあるなら
ほこるひとにはほこらしておけ
いつわるひとにはいつわらしておけ
ここに 三昧のせかいがあるなら
ほこるみずからにほこらしておけ
いかる みずからに いからしておけ"
(八木重吉)
さぁ、気合を入れて、出発。
飯豊山を頂いて、パチリ。
ゆっくりし過ぎました。
お腹を少しだけ満たして、いざ、ダイグラ尾根。
招く、宝珠山。
北股の衆のエ~ルに応えます。
まじまじと、宝珠山。秋の宴が進行中です。
鞍部まで降りて、御前坂。
山威は、ほがらか。
アップダウンに耐えましょう。
お山の凛々しい胸に安らいながら、
緊張の足さばき。
ガスの中、次なるピ~クが…。
宝珠山の岩頂に到着。
ザックを降ろし、眺覧。
山精のもてなしに与ります。
雲気雲勢を統べる飯豊山。
ん?
気配を感じて振り向けば、何とカモシカくん!
おだやかな、やわらかなまなざしで、
私を見つめています。
うれしいお見合いの?ひと時。
"慈悲となさけと和らぎと愛とに、
あらゆる者は苦しいとき祈り、"
これらの喜ばしい徳に
感謝の心をささげる。
・・・・・
慈悲は人の心にやどり、
なさけは人の顔にあらわれ、
愛はこうごうしい人の姿、
和らぎは人のまとう着物。
あらゆる国のあらゆる人の
くるしいときに祈る神は
こうごうしい人の姿をもたぬか、
愛と慈悲となさけと和らぎの。
人の姿を愛さねばならぬ、
異教びと、トルコびと、ユダヤ人も
慈悲と愛となさけとのすむところ、
そこに神おわします故。"――
とは、ブレイクの詩uta。
このカモシカくんの姿に、
慈悲と、なさけと、和らぎと、愛とを、
覚えずにはおれません。
来てくれて、ありがとう。
宝珠山の肩まで降りると、
"よかったね"と、陽精の響。
ありがとう。
カモシカくんのおかげで、元気百倍。
切り歯の尾根もなんのその。
烏帽子岳にエ~ルを戴き…
あとはすたこら。
ダイモンジソウのねぎらいエ~ルに与って…
終点、桧山沢の吊橋です。
ヘロヘロの私に、
水の精のねぎらいが沁みて来ます。
無事の下山、
お山の嘉恵に
感謝、感謝、感謝!
Fin